僕は佐野洋子の絵本が好きで、エッセイが好きで、立川談志が好きで、ナンシー関が好きで、東村アキコが好きである。言葉の美しさと言葉の厳しさの両面をよくよく見ている人たちが好きなのである。佐野洋子はーーーそのあまりにも美しい絵本の描き手にもかかわらず、いやそれゆえにーーーぶっちゃけトークのエッセイはポリティカルには全然正しくない。童話作家のくせに子どもにも厳しい。年寄にはもっと厳しい。けれども、その厳しいぶっちゃけトークにリズムがあり、なんともおかしみがあり、生きることと死ぬことに対するリンたる覚悟が感じられる。なんか、昨今このような言葉のおかしみ、言葉の機微、言葉の両義性に人が鈍感になっているように思う。何かというと不適切発言、失言、暴言、ハラスメント、規約違反などなどである。こういうときこそ伸びやかな笑いや、際どいユーモアが大切だと僕は思うのだけれど。