「社会主義」という言葉が日本において(そしてアメリカでも)与える漠然たるイメージ、それはひとことでいうと「だめなもの」というイメージだが、それは誤解であるというのが本書のテーマ。とても面白く読めた。そもそも、ソシアルであるとはどういうことか、という根源的な意味から議論し、その理念と歴史的な変遷を細かく解説していく。社会主義も共産主義も、社会民主主義もその時、その場所において異なる文脈で異なる使われ方をする。一意的なユニバーサルな「社会主義」という平たんな理解をすると、歴史をうまく理解できない。またそれは「今の目」で歴史を評定する、コモンな誤謬の土壌になる。マルクスの考えた「社会主義」、そして共産主義の解説。それが現実世界でどのような作用を与えたかというリアルな説明。それが後の神話となって「どのように説明されていたか」という誤謬の指摘(例えば、フランス二月革命におけるマルクス)が次々と指摘される。正直、文章と構成がやや煩雑でついていくのは素人の僕には大変だったけど、集中して読めば面白いものであった。ドイツ、フランス、イギリス、そしてロシアにおける「社会主義」をめぐる歴史のクールでリアルな分析と単一的な神話的な見方への批判は厳しい。平坦な二元論で社会主義や「赤」を断罪するアメリカ、そしてその自由市場主義経済に著者は批判的である。ソシアルな価値を認めているのだ、かといって既存の日本共産党と社会民主党にはさらに批判的で「トンチンカン」である、と一刀両断である。著者はソシアルという概念が今の世の中でどのように用いられるべきかに注目しており、そこに党派性や政治が感じられないのが(例えその言葉が厳しいものであったとしても)潔いものに(僕には)感じられる。
via georgebest1969.typepad.jp